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古今和歌集
卷第一 春歌上
0001
ふる年に春立ちける日よめる
在原元方
年の内に 春はきにけり 一年を 去年とやいはむ 今年とやいはむ
0002
春立ちける日よめる
紀貫之
袖ひぢて むすびし水の こほれるを 春立つけふの 風やとくらむ
0003
題しらず
讀人しらず
春霞 立てるやいづこ みよしのの 吉野の山に 雪は降りつゝ
0004
二條の后の春のはじめの御歌
雪のうちに 春は來にけり 鶯の 冰れる涙 いまやとくらむ
0005
題しらず
讀人しらず
梅が枝に きゐる鶯 はるかけて 鳴けどもいまだ 雪はふりつゝ
0006
雪の木に降りかゝれるをよめる
素性法師
春たてば 花とや見らむ しら雪の かゝれる枝に 鶯のなく
0007
題しらず
讀人しらず
心ざし 深くそめてし をりければ 消えあへぬ雪の 花と見ゆらむ
或人の曰くさきのおほきおほいまうち君(*藤原良房)の歌なり。
0008
二條の后の東宮の御息所と聞えける時正月むつき三日御前に召して仰言ある間に日は照りながら雪の頭に降りかゝりけるをよませ給ひける
文室康秀
春の日の 光にあたる われなれど かしらの雪と なるぞわびしき
0009
雪の降りけるをよめる
紀貫之
かすみ立ち 木の芽も春の 雪ふれば 花なき里も 花ぞちりける
0010
春のはじめによめる
藤原言直
春やとき 花やおそきと 聞きわかむ 鶯だにも 鳴かずもあるかな
0011
春のはじめの歌
壬生忠岑
春來ぬと 人はいへども 鶯の 鳴かぬ限りは あらじとぞおもふ
0012
寛平の御時后宮の歌合の歌
源當純
谷風に とくる冰の ひまごとに うち出づる浪や 春のはつ花
0013
紀友則
花の香を 風のたよりに たぐへてぞ 鶯さそふ しるべにはやる
0014
大江千里
鶯の 谷よりいづる 聲なくば 春くることを たれか知らまし
0015
在原棟梁
春たてど 花もにほはぬ 山里は ものうかる音に 鶯のなく
0016
題しらず
讀人しらず
野邊ちかく 家居しをれば 鶯の なくなる聲は あさな\/聞く
0017
春日野は 今日はな燒きそ 若草の 妻も籠れり われも籠れり
0018
かすが野の 飛火の野守 いでて見よ 今幾日ありて 若菜摘みてむ
0019
み山には 松の雪だに きえなくに 都は野邊の 若菜摘みけり
0020
梓弓 おして春雨 今日降りぬ 明日さへふらば 若菜つみてむ
0021
仁和のみかど(*光孝天皇)皇子におまし\/ける時に人に若菜たまひける御歌
君がため 春の野にいでて 若菜摘む わが衣手に 雪は降りつゝ
0022
歌奉れと仰せられし時詠みて奉れる
貫之
春日野の 若菜つみにや しろたへの 袖ふりはへて 人の行くらむ
0023
題しらず
在原行平朝臣
春のきる かすみの衣 ぬきをうすみ 山風にこそ 亂るべらなれ
0024
寛平の御時后の宮の歌合に詠める
源宗于朝臣
ときはなる 松のみどりも 春くれば 今ひとしほの 色まさりけり
0025
歌奉れと仰せられし時詠みてたてまつれる
貫之
我がせこが 衣はる雨 ふるごとに 野邊の緑ぞ 色まさりける
0026
あをやぎの 絲よりかくる 春しもぞ 亂れて花の 綻びにける
0027
西大寺にしのおほてらのほとりの柳をよめる
僧正遍昭
あさみどり 絲よりかけて 白露を 玉にもぬける 春のやなぎか
0028
題しらず
讀人しらず
百千鳥 さへづる春は 物ごとに あらたまれども 我ぞふりゆく
0029
をちこちの たづきも知らぬ 山中に おぼつかなくも 呼子鳥かな
0030
鴈の聲を聞きて越へまかりける人を思ひてよめる
凡河内躬恆
春くれば 鴈かへるなり 白雲の みち行きぶりに ことやつてまし
0031
歸る鴈をよめる
伊勢
春霞 たつを見捨てて ゆく鴈は 花なき里に 住みやならへる
0032
題しらず
讀人しらず
折りつれば 袖こそ匂へ 梅の花 ありとやこゝに 鶯の鳴く
0033
色よりも 香こそあはれと 思ほゆれ たが袖ふれし 宿の梅ぞも
0034
宿近く 梅の花うゑじ あぢきなく 待つ人の香に あやまたれけり
0035
梅の花 立ちよるばかり ありしより 人のとがむる 香にぞしみける
0036
梅の花を折りてよめる
東三條の左のおほいまうち君(*源常)
鶯の 笠にぬふてふ 梅の花 をりてかざさむ 老いかくるやと
0037
題しらず
素性法師
よそにのみ あはれとぞ見し 梅の花 あかぬ色香は 折りてなりけり
0038
梅の花を折りて人におくりける
友則
君ならで たれにか見せむ 梅のはな 色をも香をも 知る人ぞ知る
0039
くらぶ山にてよめる
貫之
梅の花 匂ふ春べは くらぶ山 闇に越ゆれど しるくぞありける
0040
月夜に梅の花を折りてと人のいひければをるとてよめる
躬恆
月夜には それとも見えず 梅の花 香を尋ねてぞ 知るべかりける
0041
春の夜梅の花をよめる
春の夜の 闇はあやなし 梅の花 色こそ見えね 香やはかくるゝ
0042
初瀬に詣づるごとに宿りける人の家に久しくやどらでほどへて後にいたれりければ彼の家のあるじかくさだかになむやどりはあるといひ出して侍りければそこにたてりける梅の花を折りてよめる
貫之
人はいさ 心もしらず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける
0043
水のほとりに梅の花の咲けりけるを詠める
伊勢
春ごとに 流るゝ川を 花と見て 折られぬ水に そでやぬれなむ
0044
年をへて 花の鏡と なる水は ちりかゝるをや くもるといふらむ
0045
家に有りける梅の花のちりけるをよめる
貫之
暮ると明くと めかれぬ物を 梅の花 いつの人まに 移ろひぬらむ
0046
寛平の御時后の宮の歌合の歌
讀人しらず
梅が香を 袖に移して とゞめてば 春は過ぐとも 形見ならまし
0047
素性法師
散ると見て あるべきものを 梅の花 うたて匂ひの 袖にとまれる
0048
題しらず
讀人しらず
散りぬとも 香をだに殘せ 梅の花 戀しきときの 思ひ出にせむ
0049
人の家にうゑたりける櫻の花咲きはじめたりけるを見てよめる
貫之
ことしより 春知りそむる 櫻花 ちるといふことは 習はざらなむ
0050
題しらず
讀人しらず
山高み 人もすさめぬ 櫻花 いたくなわびそ われ見はやさむ
又は里とほみ人もすさめぬ山櫻
0051
山櫻 わが見に來れば 春がすみ 嶺にも尾にも たちかくしつゝ
0052
染殿の后の御前に花瓶に櫻の花をささせ給へるを見てよめる
前のおほきおほいまうち君(*藤原良房)
年ふれば 齡は老いぬ しかはあれど 花をし見れば 物思ひもなし
0053
渚の院にて櫻を見てよめる
在原業平朝臣
世の中に たえて櫻の なかりせば 春の心は のどけからまし
0054
題しらず
讀人しらず
いはばしる 瀧なくもがな 櫻花 たをりてもこむ 見ぬ人のため
0055
山の櫻を見てよめる
素性法師
見てのみや 人にかたらむ 櫻花 手ごとに折りて いへづとにせむ
0056
花ざかりに京を見やりてよめる
見わたせば 柳さくらを こきまぜて 都ぞはるの 錦なりける
0057
櫻の花の下にて年の老いぬる事を歎きてよめる
紀友則
色も香も おなじ昔に 咲くらめど 年ふる人ぞ あらたまりける
0058
をれる櫻をよめる
貫之
たれしかも とめてをりつる 春霞 立ちかくすらむ 山の櫻を
0059
歌奉れと仰せられし時によみてたてまつれる
櫻花 咲きにけらしも あしびきの 山のかひより 見ゆる白雲
0060
寛平の御時后の宮の歌合の歌
友則
みよし野の 山邊にさける 櫻花 雪かとのみぞ あやまたれける
0061
やよひに閏月の有りける年よみける
伊勢
さくらばな 春くははれる 年だにも ひとの心に あかれやはせぬ
0062
櫻の花の盛りに久しくとはざりける人の來りける時によみける
讀人しらず
あだなりと 名にこそたてれ さくら花 としにまれなる 人も待ちけり
0063
かへし
業平朝臣
今日こずは(*原文「來ずば」) 明日は雪とぞ 降りなまし 消えずはありとも 花と見ましや
0064
題しらず
讀人しらず
ちりぬれば 戀ふれど驗 なきものを けふこそ櫻 折らば折りてめ
0065
折りとらば をしげにもあるか 櫻花 いざ宿かりて 散るまでは見む
0066
紀在友(*紀有朋)
さくら色に 衣は深く 染めてきむ 花のちりなむ 後のかたみに
0067
櫻の花のさけりけるを見にまうできたりける人によみておくりける
躬恆
我が宿の 花見がてらに くる人は 散りなむのちぞ 戀しかるべき
0068
亭子院歌合の時よめる
伊勢
見る人も なき山里の さくら花 ほかのちりなむ 後ぞ咲かまし
卷第二 春歌下
0069
題しらず
讀人しらず
春がすみ たなびく山の さくら花 うつろはむとや 色かはりゆく
0070
待てといふに 散らでしとまる ものならば 何を櫻に 思ひまさまし
0071
のこりなく 散るぞめでたき 櫻花 ありて世の中 はての憂ければ
0072
このさとに 旅寢しぬべし 櫻ばな ちりのまがひに 家路わすれて
0073
うつ蝉の 世にも似たるか 花櫻 さくと見しまに かつ散りにけり
0074
僧正遍昭によみておくりける
惟喬のみこ
櫻花 ちらば散らなむ 散らずとて ふるさと人の きても見なくに
0075
雲林院にて櫻の花のちりけるを見てよめる
そうく法師(*承均)
櫻散る はなのところは 春ながら 雪ぞふりつゝ きえがてにする
0076
櫻の花の散り侍りけるを見て詠みける
素性法師
花ちらす 風のやどりは たれかしる われに教へよ 行きて恨みむ
0077
雲林院にて櫻の花をよめる
そうく法師
いざ櫻 我もちりなむ ひとさかり ありなば人に うきめ見えなむ
0078
あひ知れりける人のまうできて歸りにける後によみて花にさしてつかはしける
貫之
ひとめ見し 君もやくると 櫻花 けふは待ちみて 散らばちらなむ
0079
山の櫻を見てよめる
春がすみ なにかくすらむ 櫻花 ちるまをだにも 見るべきものを
0080
心地そこなひてわづらひける時に風にあたらじとておろしこめてのみ侍りける間に折れる櫻の散りがたになれりけるを見てよめる
藤原よるかの朝臣(*藤原因香)
たれこめて 春のゆくへも 知らぬまに 待ちし櫻も 移ろひにけり
0081
東宮の雅院にて櫻の花の御溝水みかはみづにちりて流れけるを見てよめる
菅野高世
枝よりも あだに散りにし 花なれば 落ちても水の 泡とこそなれ
0082
櫻の花のちりけるをよめる
貫之
ことならば 咲かずやはあらぬ 櫻花 みるわれさへに しづ心なし
0083
櫻のごと疾くちる物はなしと人のいひければよめる
さくら花 とく散りぬとも おもほえず 人の心ぞ 風もふきあへぬ
0084
さくらの花のちるをよめる
紀友則
久かたの ひかりのどけき はるの日に しづ心なく 花のちるらむ
0085
東宮の帶刀たちはきの陣にて櫻の花の散るをよめる
藤原好風
春風は はなのあたりを よきて吹け 心づからや うつろふとみむ
0086
櫻のちるをよめる
凡河内躬恆
ゆきとのみ 降るだにあるを 櫻花 いかにちれとか 風の吹くらむ
0087
ひえに登りて歸りまうできて詠める
貫之
山たかみ 見つゝわがこし 櫻花 風はこゝろに まかすべらなり
0088
題しらず
大伴黑主
はるさめの 降るは涙か さくら花 ちるををしまぬ 人しなければ
0089
亭子院の歌合の歌
貫之
さくら花 ちりぬる風の なごりには 水なきそらに 波ぞ立ちける
0090
ならのみかどの御歌
故郷と なりにし奈良の みやこにも 色はかはらず 花は咲きけり
0091
春の歌とてよめる
良岑宗貞
花の色は かすみにこめて 見せずとも 香をだにぬすめ 春の山風
0092
寛平の御時后の宮の歌合の歌
素性法師
花の木も 今はほり植ゑじ 春たてば うつろふ色に 人ならひけり
0093
題しらず
讀人しらず
春の色の 到りいたらぬ 里はあらじ 咲けるさかざる 花の見ゆらむ
0094
春の歌とてよめる
貫之
三輪山を しかもかくすか 春がすみ 人にしられぬ 花やさくらむ
0095
雲林院の皇子(*常康親王。仁明天皇の皇子。)の許に花見に北山の邊にまかれりける時によめる
素性
いざけふは 春の山邊に まじりなむ 暮れなばなげの 花のかげかは
0096
春の歌とてよめる
いつまでか 野邊に心の あくがれむ 花し散らずは(*原文「散らずば」) 千代も經ぬべし
0097
題しらず
讀人しらず
春ごとに 花のさかりは ありなめど あひ見むことは 命なりけり
0098
花のごと 世の常ならば すぐしてし 昔はまたも かへり來なまし
0099
吹く風に あつらへつくる ものならば 此の一本は よきよ(*避きよ)といはまし
0100
待つひとも 來ぬものゆゑに 鶯の なきつる花を 折りてけるかな
0101
寛平の御時きさいの宮の歌合の歌
藤原興風
咲く花は ちぐさながらに あだなれど たれかは春を 恨みはてたる
0102
春がすみ 色のちぐさに 見えつるは たなびく山の 花のかげかも
0103
在原元方
かすみたつ 春の山邊は とほけれど 吹きくる風は 花の香ぞする
0104
うつろへる花を見てよめる
躬恆
花みれば 心さへにぞ うつりける 色には出でじ 人もこそ知れ
0105
題しらず
讀人しらず
鶯の なく野邊ごとに 來てみれば うつろふ花に かぜぞ吹きける
0106
吹くかぜを なきてうらみよ 鶯は われやは花に 手だにふれたる
0107
典侍洽子朝臣
散る花の なくにしとまる ものならば われ鶯に おとらましやは
0108
仁和の中將の御息所の家に歌合せむとてしける時によめる
藤原後蔭
花のちる ことやわびしき 春がすみ たつたの山の うぐひすの聲
0109
鶯の鳴くをよめる
素性
木傳へば おのが羽風に ちる花を 誰におほせて こゝら鳴くらむ
0110
鶯の花の木にて鳴くをよめる
躬恆
しるしなき 音をもなくかな 鶯の ことしのみちる 花ならなくに
0111
題しらず
讀人しらず
駒なめて いざ見にゆかむ 故郷は 雪とのみこそ 花は散るらめ
0112
散る花を 何か恨みむ 世の中に わが身もともに あらむものかは
0113
小野小町
花の色は 移りにけりな いたづらに 我が身世にふる ながめせしまに
0114
仁和の中將のみやすん所の家に歌合せむとてしける時によめる
素性
をしと思ふ 心は絲に よられなむ 散る花ごとに ぬきてとゞめむ
0115
志賀の山越にをんなの多くあへりけるによみて遣はしける
貫之
梓弓 はるのやまべを 越えくれば 道もさりあへず 花ぞ散りける
0116
寛平の御時きさいの宮の歌合の歌
春の野に 若菜つまむと こしものを 散りかふ花に 道はまどひぬ
0117
山寺にまうでたりけるによめる
やどりして 春の山邊に ねたる夜は 夢のうちにも 花ぞ散りける
0118
寛平の御時きさいの宮の歌合の歌
吹く風と 谷の水とし なかりせば み山がくれの 花を見ましや
0119
志賀より歸りける女どもの花山に入りて藤の花の下に立ちよりて歸りけるに詠みて送りける
僧正遍昭
よそに見て かへらむ人に 藤の花 はひまつはれよ 枝は折るとも
0120
家に藤の花さけりけるを人の立ちとまりて見けるをよめる
躬恆
我が宿に さける藤波 たちかへり 過ぎがてにのみ 人の見るらむ
0121
題しらず
讀人しらず
今もかも 咲きにほふらむ たちばなの こじまのさきの 山吹の花
0122
はるさめに にほへるいろも あかなくに 香さへなつかし 山吹の花
0123
山吹は あやなな咲きそ 花見むと うゑけむ君が こよひこなくに
0124
吉野川の邊に山吹の咲けりけるをよめる
貫之
吉野川 きしのやまぶき 吹く風に 底のかげさへ うつろひにけり
0125
題しらず
讀人しらず
かはづなく 井手の山吹 ちりにけり 花のさかりに あはましものを
此の歌は或人のいはく橘のきよともが歌なり
0126
春の歌とてよめる
素性
思ふどち 春の山邊に うちむれて そこともいはぬ 旅寢してしが
0127
春のとく過ぐるをよめる
躬恆
梓弓 春たちしより としつきの 射るがごとくも おもほゆるかな
0128
やよひに鶯の聲久しう聞えざりけるをよめる
貫之
鳴きとむる 花しなければ 鶯も はてはものうく なりぬべらなり
0129
やよひのつごもりがたに山を越えけるに山川より花の流れけるをよめる
深養父
花ちれる 水のまに\/ とめくれば 山には春も なくなりにけり
0130
春を惜しみてよめる
元方
をしめども とゞまらなくに 春霞 かへる道にし たちぬと思へば
0131
寛平の御時きさいの宮の歌合の歌
興風
聲たえず なけや鶯 ひととせに ふたたびとだに 來べき春かは
0132
やよひのつごもりの日花つみより歸りける女どもを見てよめる
躬恆
とゞむべき ものとはなしに はかなくも 散る花ごとに たぐふ心か
0133
やよひのつごもりの日雨の降りけるに藤の花を折りて人に遣はしける
業平朝臣
ぬれつゝぞ しひて折りつる 年の内に 春は幾日も あらじと思へば
0134
亭子院の歌合に春のはての歌
躬恆
今日のみと 春を思はぬ 時だにも たつことやすき 花のかげかは
卷第三 夏歌
0135
題しらず
讀人しらず
我がやどの 池の藤波 さきにけり 山ほとゝぎす いつか來なかむ
この歌ある人のいはく柿本人麿がなり
0136
卯月にさける櫻を見てよめる
紀としさだ(*紀利貞)
あはれてふ 事をあまたに やらじとや 春に遲れて ひとりさくらむ
0137
題しらず
讀人しらず
さつきまつ 山郭公 うち羽ぶき いまもなかなむ 去年のふるごゑ
0138
伊勢
五月こば なきもふりなむ 郭公 まだしきほどの こゑをきかばや
0139
讀人しらず
さつき待つ 花たちばなの 香をかげば 昔のひとの 袖の香ぞする
0140
いつのまに 五月きぬらむ あしびきの 山郭公 いまぞ鳴くなる
0141
けさきなき いまだ旅なる ほとゝぎす 花たちばなに 宿はからなむ
0142
音羽山を越えける時に郭公の鳴くをききてよめる
紀友則
音羽山 けさ越えくれば ほとゝぎす 梢はるかに 今ぞなくなる
0143
郭公の初めて鳴きけるを聞きてよめる
素性
ほとゝぎす 初聲きけば あぢきなく 主さだまらぬ 戀せらるはた
0144
奈良の石の上寺にて郭公の鳴くをよめる
いそのかみ ふるきみやこの 郭公 聲ばかりこそ むかしなりけれ
0145
題しらず
讀人しらず
夏山に なくほとゝぎす 心あらば 物おもふわれに 聲な聞かせそ
0146
ほとゝぎす なく聲きけば わかれにし 故郷さへぞ こひしかりける
0147
郭公 ながなく里の あまたあれば なほ疎まれぬ 思ふものから
0148
おもひいづる ときはの山の 郭公 からくれなゐの ふり出てぞ鳴く
0149
こゑはして 涙は見えぬ ほとゝぎす わが衣手の ひづをからなむ
0150
あしびきの 山郭公 をりはへて 誰かまさると 音をのみぞなく
0151
いまさらに 山へかへるな 郭公 こゑのかぎりは 我がやどに鳴け
0152
みくにのまち(*三国町)
やよやまて 山郭公 ことづてむ われ世のなかに すみわびぬとよ
0153
寛平の御時きさいの宮の歌合の歌
紀友則
さみだれに 物思ひをれ 郭公 夜ぶかく鳴きて いづち行くらむ
0154
夜やくらき 道やまどへる 郭公 わがやどをしも 過ぎがてに鳴く
0155
大江千里
やどりせし 花たちばなも 枯れなくに など郭公 こゑたえぬらむ
0156
紀貫之
夏の夜の ふすかとすれば 郭公 なくひと聲に 明くるしのゝめ
0157
壬生忠岑
暮るゝかと みれば明けぬる 夏の夜を あかずとや鳴く やま郭公
0158
紀秋岑
夏山に こひしき人や 入りにけむ 聲ふりたてて 鳴くほとゝぎす
0159
題しらず
讀人しらず
去年の夏 なきふるしてし 郭公 それかあらぬか こゑのかはらぬ
0160
郭公の鳴くを聞きてよめる
貫之
五月雨の そらもとゞろに 郭公 なにをうしとか 夜たゞ鳴くらむ
0161
さぶらひにてをのこどもの酒たうべけるに召して郭公まつ歌よめとありければよめる
躬恆
郭公 こゑもきこえず 山びこは ほかに鳴く音を こたへやはせぬ
0162
山に郭公の鳴きけるを聞きてよめる
貫之
郭公 ひとまつやまに 鳴くなれば われうちつけに 戀ひまさりけり
0163
早くすみける所にて郭公の鳴きけるを聞きてよめる
忠岑
むかしべや 今も戀しき ほとゝぎす 故郷にしも なきてきつらむ
0164
郭公の鳴きけるを聞きてよめる
躬恆
ほとゝぎす われとはなしに うの花の 憂きよの中に 鳴き渡るらむ
0165
蓮の露を見てよめる
僧正遍昭
はちす葉の にごりにしまぬ 心もて なにかは露を 玉とあざむく
0166
月の面白かりける夜あかつきがたによめる
深養父
夏の夜は まだよひながら あけぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ
0167
鄰より常夏の花をこひにおこせたりければをしみてこの歌をよみて遣はしける
躬恆
塵をだに すゑじとぞ思ふ 咲きしより いもと我がぬる 常夏の花
0168
みな月のつごもりの日よめる
夏と秋と ゆきかふ空の かよひぢは かたへ涼しき 風や吹くらむ
卷第四 秋歌上
0169
秋立つ日よめる
藤原敏行朝臣
秋來ぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ 驚かれぬる
0170
秋立つ日うへのをのこども賀茂の川原に川逍遙しけるともにまかりてよめる
貫之
川風の 涼しくもあるか うちよする 波とともにや 秋は立つらむ
0171
題しらず
讀人しらず
我がせこが 衣の裾を 吹きかへし うら珍らしき 秋のはつ風
0172
昨日こそ さ苗とりしか いつのまに 稻葉そよぎて 秋風ぞ吹く
0173
あきかぜの 吹きにし日より 久かたの あまの河原に たたぬ日はなし
0174
ひさかたの 天の河原の わたしもり 君渡りなば かぢかくしてよ
0175
天の川 もみぢを橋に わたせばや たなばたつめの 秋をしも待つ
0176
こひ戀ひて 逢ふ夜は今宵 あまの川 霧たちわたり あけずもあらなむ
0177
寛平の御時七日の夜うへにさぶらふ男ども歌奉れと仰せられける時人にかはりてよめる
友則
天の川 あさせしら波 たどりつゝ わたりはてねば 明けぞしにける
0178
同じ御時きさいの宮の歌合の歌
藤原興風
契りけむ 心ぞつらき たなばたの 年にひとたび 逢ふは逢ふかは
0179
なぬかの日の夜よめる
凡河内躬恆
年ごとに 逢ふとはすれど たなばたの ぬる夜の數ぞ すくなかりける
0180
たなばたに かしつる絲の うちはへて 年のを長く 戀ひや渡らむ
0181
題しらず
素性
今宵來む 人にはあはじ たなばたの 久しきほどに 待ちもこそすれ
0182
七日の夜の曉によめる
源宗于朝臣
今はとて わかるゝときは 天の川 渡らぬさきに 袖ぞひぢぬる
0183
八日の日よめる
壬生忠岑
けふよりは 今こむ年の 昨日をぞ いつしかとのみ 待ち渡るべき
0184
讀人しらず
木の間より もりくる月の かげ見れば 心づくしの 秋はきにけり
0185
おほかたの 秋くるからに わが身こそ 悲しきものと 思ひ知りぬれ
0186
わが爲に くる秋にしも あらなくに 蟲の音きけば まづぞ悲しき
0187
ものごとに 秋ぞ悲しき もみぢつゝ 移ろひゆくを かぎりと思へば
0188
ひとりぬる 牀は草葉に あらねども 秋くる宵は つゆけかりけり
0189
これさだのみこの家の歌合の歌
いつはとは 時はわかねど 秋の夜ぞ 物思ふ事の かぎりなりける
0190
かんなりのつぼ(*襲芳舎)に人々集まりて秋の夜惜しむ歌よみけるついでによめる
躬恆
かくばかり をしと思ふ夜を いたづらに 寐て明すらむ 人さへぞうき
0191
題しらず
讀人しらず
しら雲に 羽うちかはし とぶ鴈の かずさへみゆる 秋の夜の月
0192
さよなかと 夜はふけぬらし 雁がねの きこゆる空に 月渡るみゆ
0193
是貞のみこの家の歌合によめる
大江千里
月見れば ちゞに物こそ 悲しけれ わが身一つの 秋にはあらねど
0194
忠岑
久かたの 月の桂も 秋はなほ もみぢすればや 照りまさるらむ
0195
月をよめる
在原元方
秋の夜の つきの光し あかければ くらぶの山も こえぬべらなり
0196
人の許にまかれりける夜きり\〃/すの鳴きけるを聞きてよめる
藤原たゞふさ(*忠房)
蛬きり\〃/す いたくな鳴きそ あきの夜の ながき思ひは われぞまされる
0197
是貞のみこの家の歌合のうた
敏行朝臣
秋の夜の 明くるも知らず 鳴く蟲は わがごと物や 悲しかるらむ
0198
題しらず
讀人しらず
秋萩も 色づきぬれば きり\〃/す 我がねぬごとや 夜は悲しき
0199
秋の夜は 露こそことに さむからし 草むらごとに 蟲のわぶれば
0200
君しのぶ 草にやつるゝ 故郷は まつむしの音ぞ 悲しかりける
0201
秋の野に 道もまどひぬ 松蟲の こゑするかたに やどやからまし
0202
秋の野に ひとまつ蟲の 聲すなり われかと行きて いざとぶらはむ
0203
もみぢ葉の 散りて積れる 我が宿に 誰をまつ蟲 こゝら鳴くらむ
0204
ひぐらしの なきつるなべに 日は暮れぬ と思ふは山の 陰にぞありける
0205
ひぐらしの なく山里の ゆふぐれは 風よりほかに とふ人もなし
0206
初鴈をよめる
在原元方
待つ人に あらぬものから 初鴈の けさなく聲の めづらしきかな
0207
是貞のみこの家の歌合の歌
友則
秋風に 初鴈がねぞ きこゆなる たがたまづさを かけて來つらむ
0208
題しらず
讀人しらず
我が門に 稻おほせ鳥(*鶺鴒という。)の 鳴くなべに けさ吹く風に 鴈は來にけり
0209
いと早も 鳴きぬる鴈か しら露の 色どる木々も もみぢあへなくに
0210
春霞 かすみていにし かりがねは 今ぞなくなる 秋ぎりの上に
0211
夜を寒み 衣かりがね なくなべに 萩の下葉も うつろひにけり
此の歌は或人のいはく柿本人麿がなりと。
0212
寛平の御時きさいの宮の歌合の歌
藤原菅根朝臣
秋風に 聲をほにあげて くる船は 天のとわたる 鴈にぞありける
0213
躬恆
うきことを 思ひつらねて 鴈がねの 鳴きこそ渡れ 秋のよな\/
0214
是貞のみこの家の歌合の歌
忠岑
山里は 秋こそことに わびしけれ 鹿の鳴く音に めをさましつゝ
0215
讀人しらず
おくやまに 紅葉ふみわけ なく鹿の 聲きくときぞ 秋はかなしき
0216
題しらず
秋萩に うらびれをれば あしびきの 山したとよみ 鹿の鳴くらむ
0217
秋はぎを しがらみふせて 鳴く鹿の 目には見えずて 音のさやけさ
0218
是貞のみこの家の歌合によめる
秋萩の はな咲きにけり たかさごの をのへの鹿は 今や鳴くらむ
0219
昔あひ知りて侍りける人の秋の野にて逢ひて物語しけるついでによめる
躬恆
あき萩の ふるえにさける 花みれば もとの心は 忘れざりけり
0220
題しらず
讀人しらず
秋萩の 下葉色づく いまよりや ひとりある人の いねがてにする
0221
なきわたる 鴈の涙や おちつらむ 物思ふ宿の 萩のうへの露
0222
萩のつゆ 玉にぬかむと とればけぬ よし見む人は 枝ながら見よ
ある人のいはくこの歌は奈良の帝の御歌なりと
0223
をりてみば おちぞしぬべき 秋萩の 枝もたわゝに おける白露
0224
萩が花 ちるらむ小野の 露霜に ぬれてを行かむ さ夜はふくとも
0225
是貞のみこの家の歌合によめる
文屋朝康
秋の野に おく白露は 玉なれや つらぬきかくる くもの絲すぢ
0226
題しらず
僧正遍昭
名にめでて 折れるばかりぞ 女郎花 われおちにきと 人に語るな
0227
僧正遍昭が許に奈良へまかりける時に男山にて女郎花を見てよめる
布留今道
女郎花 うしとみつゝぞ ゆきすぐる 男山にし たてりと思へば
0228
是貞のみこの家の歌合の歌
敏行朝臣
秋の野に やどりはすべし 女郎花 名をむつましみ 旅ならなくに
0229
題しらず
小野美材
女郎花 多かる野邊に 宿りせば あやなくあだの 名をや立ちなむ
0230
朱雀院(*前出、亭子院)の女郎花合に詠みて奉りける
左のおほいまうち君(*藤原時平)
をみなへし 秋の野風に うちなびき 心ひとつを 誰によすらむ
0231
藤原定方朝臣
秋ならで あふことかたき 女郎花 あまの川原に おひぬものゆゑ
0232
貫之
たがあきに あらぬ物ゆゑ 女郎花 なぞ色にいでて まだき移ろふ
0233
躬恆
妻こふる 鹿ぞなくなる 女郎花 おのがすむ野の 花としらずや
0234
女郎花 ふきすぎてくる 秋かぜは 目には見えねど 香こそしるけれ
0235
忠岑
人の見る ことやくるしき 女郎花 秋ぎりにのみ たちかくるらむ
0236
ひとりのみ ながむるよりは 女郎花 わがすむ宿に うゑて見ましを
0237
物へまかりける人の家に女郎花うゑたりけるを見てよめる
兼覽王
女郎花 うしろめたくも 見ゆるかな 荒れたるやどに 獨りたてれば
0238
寛平の御時藏人所のをのこども嵯峨野に花見むとてまかりたりける時歸るとて皆歌よみけるついでによめる
平貞文
花にあかで なに歸るらむ 女郎花 おほかる野邊に ねなましものを
0239
是貞のみこの家の歌合の歌
敏行朝臣
何人か きてぬぎかけし ふぢばかま 來る秋ごとに 野邊を匂はす
0240
藤袴をよみて人に遣はしける
貫之
やどりせし 人のかたみか 藤ばかま 忘られがたき 香に匂ひつゝ
0241
ふぢばかまをよめる
素性
ぬししらぬ 香こそ匂へれ 秋の野に たがぬぎかけし 藤袴ぞも
0242
題しらず
平貞文
今よりは 植ゑてだに見じ 花薄 ほにいづる秋は わびしかりけり
0243
寛平の御時きさいの宮の歌合の歌
在原むねやな(*棟梁)
秋の野の くさのたもとか 花薄 ほにいでてまねく 袖とみゆらむ
0244
素性法師
われのみや あはれと思はむ 蛬きり\〃/す なくゆふかげの やまとなでしこ
0245
題しらず
讀人しらず
みどりなる ひとつ草とぞ 春は見し 秋は色々の 花にぞありける
0246
もゝ草の 花のひもとく 秋の野に おもひたはれむ 人なとがめそ
0247
月草に 衣はすらむ あさ露に ぬれてののちは うつろひぬとも
0248
仁和の帝(*光孝天皇)みこにおはしましける時ふるの瀧(*石上の布留川上流)御覽ぜむとておはしましける道に遍昭が母の家に宿り給へりける時に庭を秋の野につくりて御物語のついでによみて奉りける
僧正遍昭
里はあれて 人はふりにし 宿なれや 庭もまがきも 秋の野らなる
卷第五 秋歌下
0249
是貞のみこの家の歌合の歌
文室康秀
吹くからに 秋の草木の 萎るれば むべ山風を あらしといふらむ
0250
草も木も 色かはれども わたつ海の なみのはなにぞ 秋なかりける
0251
秋の歌合しける時によめる
紀淑望
もみぢせぬ ときはの山は 吹く風の 音にや秋を ききわたるらむ
0252
題しらず
讀人しらず
霧たちて 鴈ぞ鳴くなる 片岡の あしたのはらは もみぢしぬらむ
0253
神無月かみなづき しぐれもいまだ 降らなくに かねてうつろふ 神なびの森
0254
ちはやぶる 神なび山の もみぢ葉に おもひはかけじ うつろふものを
0255
貞觀の御時(*清和天皇の代の年号)綾綺殿の前に梅の木ありけり西の方にさせりける枝の紅葉そめたりけるをうへに侍ふ男どものよみけるついでによめる
藤原勝臣
おなじえを わきて木の葉の うつろふは 西こそ秋の 初めなりけれ
0256
石山に詣でける時音羽山の紅葉を見てよめる
貫之
秋風の 吹きにし日より 音羽山 みねのこずゑも 色づきにけり
0257
是貞のみこの家の歌合によめる
敏行朝臣
白露の 色はひとつを いかにして 秋の木の葉を ちゞにそむらむ
0258
壬生忠岑
秋の夜の 露をばつゆと おきながら 鴈の涙や 野邊をそむらむ
0259
題しらず
讀人しらず
秋の露 色々ことに おけばこそ 山の木の葉の ちぐさなるらめ
0260
もる山(*近江国野洲郡守山)のほとりにてよめる
貫之
しらつゆも 時雨も いたくもる山は 下葉のこらず 色づきにけり
0261
秋の歌とてよめる
在原元方
雨降れど つゆももらじを 笠とりの 山はいかでか 紅葉そめけむ
0262
神の社の邊をまかりける時にいがきのうちの紅葉を見てよめる
貫之
ちはやぶる 神のい垣に はふ葛も 秋にはあへず うつろひにけり
0263
是貞のみこの家の歌合によめる
忠岑
雨ふれば かさとり山の もみぢ葉は 行きかふ人の 袖さへぞてる
0264
寛平の御時きさいの宮の歌合の歌
讀人しらず
散らねども かねてぞをしき もみぢ葉は 今はかぎりの 色と見つれば
0265
大和の國にまかりける時佐保山に霧のたてりけるを見てよめる
紀友則
たがための 錦なればか 秋霧の さほの山べを たちかくすらむ
0266
是貞のみこの家の歌合のうた
讀人しらず
秋霧は 今朝はなたちそ さほやまの 柞のもみぢ よそにても見む
0267
秋の歌とてよめる
坂上是則
佐保山の はゝその色は うすけれど 秋は深くも なりにけるかな
0268
人の前栽に菊に結び附けて植ゑける歌
在原業平朝臣
うゑし植ゑば 秋なき時や 咲かざらむ 花こそちらめ 根さへ枯れめや
0269
寛平の御時菊の花をよませたまうける
敏行朝臣
久かたの 雲のうへにて 見る菊は あまつ星とぞ あやまたれける
この歌はまだ殿上許されざりける時に召し上げられてつかうまつるとなむ
0270
是貞のみこの家の歌合の歌
紀友則
露ながら 折りてかざさむ 菊の花 老いせぬ秋の ひさしかるべく
0271
寛平の御時后の宮の歌合の歌
大江千里
植ゑし時 花まちどほに ありし菊 うつろふ秋に あはむとや見し
同じ御時せられける菊合に洲濱をつくりて菊の花植ゑたりけるにくはへたりける歌
0272
吹上の濱に菊植ゑたりけるをよめる
菅原朝臣(*菅原道真)
秋風の ふきあげにたてる 白菊は 花かあらぬか 波のよするか
0273
仙宮に菊をわけて人のいたれるかたをよめる
素性法師
ぬれてほす 山路の菊の 露のまに いつか千年を われは經にけむ
0274
菊の花のもとにて人の人待てるかたをよめる
友則
花見つゝ 人まつ時は しろたへの 袖かとのみぞ あやまたれける
0275
おほ澤の池のかたに菊植ゑたるをよめる
ひともとと 思ひし花を おほさはの 池の底にも たれか植ゑけむ
0276
世の中のはかなきことを思ひける折に菊の花を見てよめる
貫之
秋の菊 匂ふかぎりは かざしてむ 花よりさきと 知らぬわが身を
0277
白菊の花をよめる
凡河内躬恆
こゝろあてに 折らばやをらむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花
0278
是貞のみこの家の歌合の歌
讀人しらず
いろかはる 秋の菊をば ひととせに ふたたび匂ふ 花とこそ見れ
0279
仁和寺に菊の花めしける時に歌そへて奉れと仰せられければよみて奉りける
平貞文
秋をおきて 時こそ有りけれ 菊の花 移ろふからに 色のまされば
0280
人の家なりける菊の花を移し植ゑたりけるをよめる
貫之
咲きそめし 宿しかはれば 菊の花 色さへにこそ うつろひにけれ
0281
題しらず
讀人しらず
さほ山の 柞のもみぢ 散りぬべみ よるさへ見よと 照らす月かげ
0282
宮づかへ久しうつかうまつらで山里にこもり侍りけるによめる
藤原關雄
奧山の いはがき紅葉 ちりぬべし 照る日のひかり 見る時なくて
0283
題しらず
讀人しらず
たつたがは 紅葉みだれて 流るめり わたらば錦 なかやたえなむ
此の歌は或人奈良の帝の御歌なりとなむ申す
0284
龍田川 もみぢ葉ながる 神なびの みむろの山に しぐれ降るらし
又はあすか川もみぢ葉流る 此歌不レ注2人麿歌1
0285
戀しくは(*原文「戀しくば」) 見てもしのばむ もみぢ葉を 吹きな散らしそ 山おろしの風
0286
秋風に あへず散りぬる もみぢ葉の ゆくと定めぬ われぞ悲しき
0287
秋はきぬ 紅葉は宿に ふりしきぬ 道ふみ分けて とふ人はなし
0288
ふみわけて 更にや訪はむ 紅葉(*もみぢば)の ふりかくしたる 道と見ながら
0289
秋の月 やまべさやかに 照らせるは おつる紅葉の 數を見よとか
0290
吹く風の 色の千種に 見えつるは 秋の木の葉の 散ればなりけり
0291
關雄
霜のたて 露のぬきこそ 弱からし やまの錦の 織ればかつちる
0292
雲林院の木のかげにたゝずみてよみける
僧正遍昭
わび人の わきて立ちよる 木の下は 頼むかげなく 紅葉散りけり
0293
二條の后の春宮の御息所と申しける時に御屏風に龍田川に紅葉流れたるかたをかけりけるを題にてよめる
素性
もみぢ葉の 流れてとまる みなとには 紅ふかき 波やたつらむ
0294
業平朝臣
ちはやぶる 神代もきかず 龍田川 からくれなゐに 水くゝるとは
0295
是貞のみこの家の歌合の歌
敏行朝臣
我がきつる 方も知られず くらぶ山 木々のこの葉の 散りとまがふに
0296
忠岑
かみなびの みむろのやまを 秋ゆけば 錦たちきる こゝちこそすれ
0297
北山に紅葉折らむとてまかれりける時によめる
貫之
見るひとも なくて散りぬる おく山の 紅葉はよるの 錦なりけり
0298
秋の歌
兼覽王
龍田姫 たむくる神の あればこそ 秋の木の葉の ぬさと散るらめ
0299
小野といふ所に住み侍りける時もみぢを見てよめる
貫之
秋のやま 紅葉を幣と たむくれば 住むわれさへぞ 旅心地する
0300
神なび山を過ぎて龍田川を渡りける時に紅葉の流れけるをよめる
清原深養父
かみなびの 山を過ぎゆく 秋なれば 龍田川にぞ ぬさはたむくる
0301
寛平の御時后の宮の歌合の歌
藤原興風
しら波に あきの木の葉の うかべるを あまの流せる 船かとぞ見る
0302
龍田川のほとりにてよめる
坂上是則
もみぢ葉の 流れざりせば 龍田川 みづの秋をば たれか知らまし
0303
志賀の山越にてよめる
春道列樹
山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり
0304
池のほとりにて紅葉のちるをよめる
躬恆
風ふけば おつるもみぢ葉 水きよみ 散らぬ影さへ 底に見えつゝ
0305
亭子院の御屏風の繪に川渡らむとする人の紅葉のちる木のもとに馬をひかへて立てるをよませ給ひければつかうまつりける
立ちとまり 見てを渡らむ もみぢ葉は 雨と降るとも 水はまさらじ
0306
是貞のみこの家の歌合の歌
忠岑
山田もる 秋のかり庵に おく露は いなおほせ鳥の 涙なりけり
0307
題しらず
讀人しらず
ほにもいでぬ 山田をもると ふぢ衣 稻葉の露に ぬれぬ日はなし
0308
刈れる田に 生ふる■ひつち(禾偏+魯:りょ:ひつち・ひつじ:大漢和25364)(*穭、原文「穭ひつぢ」、刈り取った後に再び自生する稲。穂をつけることはない。)の ほに出ぬは 世を今更に あき果てぬとか
0309
北山に僧正遍昭と茸狩にまかれりけるによめる
素性法師
もみぢ葉は 袖にこき入れて もて出なむ 秋はかぎりと 見む人のため
0310
寛平の御時ふるき歌奉れとおほせられければ龍田川もみぢ葉流るといふ歌(*284番の歌)を書きてその同じ心をよめりける
興風
みやまより 落ちくる水の 色みてぞ 秋はかぎりと 思ひしりぬる
0311
秋のはつる心を龍田川に思ひやりてよめる
貫之
年毎に もみぢ葉ながす 龍田川 みなとや秋の とまりなるらむ
0312
なが月のつごもりの日大井にてよめる
ゆふづくよ をぐらの山に なく鹿の 聲のうちにや 秋はくるらむ
0313
同じつごもりの日よめる
躬恆
道しらば 尋ねも行かむ もみぢ葉を 幣とたむけて 秋はいにけり
卷第六 冬歌
0314
題しらず
讀人しらず
たつた川 にしきおりかく 神無月 しぐれの雨を たてぬきにして
0315
冬の歌とてよめる
源宗于朝臣
山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば
0316
題しらず
讀人しらず
おほぞらの 月の光し 清ければ かげ見し水ぞ まづこほりける
0317
夕されば 衣手さむし みよしのの 吉野の山に みゆきふるらし
0318
今よりは つぎて降らなむ わが宿の すゝきおしなみ ふれるしら雪
0319
ふる雪は かつぞけぬらし 足びきの 山の瀧つ瀬 おとまさるなり
0320
この川に もみぢばながる 奧山の ゆきげの水ぞ いままさるらし
0321
ふるさとは 吉野の山し ちかければ ひと日もみ雪 ふらぬ日はなし
0322
我が宿は 雪ふりしきて 道もなし ふみわけてとふ 人しなければ
0323
冬の歌とてよめる
紀貫之
雪ふれば 冬ごもりせる 草も木も 春にしられぬ 花ぞ咲きける
0324
志賀の山ごえにてよめる
紀あきみね(*紀秋岑)
白雪の ところもわかず 降りしけば 巖にも咲く はなとこそ見れ
0325
奈良の京にまかれりける時に宿りける所にてよめる
坂上是則
みよしのの 山のしら雪 つもるらし 故郷さむく なりまさるなり
0326
寛平の御時后の宮の歌合の歌
藤原興風
浦ちかく 降りくる雪は しら波の すゑの松山 こすかとぞ見る
0327
壬生忠岑
みよしのの 山の白雪 ふみわけて 入りにし人の おとづれもせぬ
0328
白雪の ふりてつもれる 山里は すむ人さへや おもひきゆらむ
0329
雪のふるを見てよめる
凡河内躬恆
雪ふりて 人もかよはぬ 道なれや 跡はかもなく おもひ消ゆらむ
0330
雪のふりけるをよみける
清原深養父
冬ながら 空より花の ちりくるは 雲のあなたは 春にやあるらむ
0331
雪の木に降りかゝれりけるを詠める
貫之
冬ごもり 思ひかけぬを 木のまより 花とみるまで 雪ぞふりける
0332
大和の國にまかれりける時に雪の降りけるを見てよめる
坂上是則
あさぼらけ 有明の月と みるまでに 吉野の里に 降れるしら雪
0333
題しらず
讀人しらず
けぬがうへに またもふりしけ 春霞 たちなばみ雪 まれにこそ見め
0334
梅のはな それとも見えず 久方の あまぎる雪の なべてふれれば
此の歌は或人のいはく柿本人麿が歌なり
0335
梅の花に雪のふれるをよめる
小野篁朝臣
花の色は 雪にまじりて 見えずとも 香をだに匂へ 人の知るべく
0336
雪のうちの梅の花をよめる
紀貫之
梅の香の 降りおける雪に 紛ひせば(*まがひせば) 誰かこと\〃/ 分きて折らまし
0337
ゆきのふりけるを見てよめる
紀友則
雪ふれば 木毎に花ぞ さきにける いづれを梅と わきて折らまし
0338
物へまかりける人を待ちてしはすのつごもりによめる
躬恆
我がまたぬ 年はきぬれど 冬草の かれにし人は おとづれもせず
0339
年のはてによめる
在原元方
あらたまの 年の終りに なるごとに 雪もわが身も ふりまさりつゝ
0340
寛平の御時后の宮の歌合の歌
讀人しらず
雪ふりて 年のくれぬる 時にこそ つひにもみぢぬ 松も見えけれ
0341
年のはてによめる
春道列樹
昨日といひ 今日と暮して あすか川 ながれて早き 月日なりけり
0342
歌奉れと仰せられし時によみて奉れる
紀貫之
行く年の 惜しくもあるかな ます鏡 みる影さへに くれぬと思へば
卷第七 賀歌
0343
題しらず
讀人しらず
我が君は 千世に八千代に さゞれ石の いはほとなりて 苔のむすまで
0344
わたつ海の 濱の眞砂を 數へつゝ 君が千とせの ありかずにせむ
0345
しほの山 さしでの磯に すむ千鳥 君が御代をば やちよとぞ鳴く
0346
我が齡 きみがやちよに とり添へて とゞめおきてば 思ひでにせよ
0347
仁和の御時(*光孝天皇の代)僧正遍昭に七十の賀給ひける時の御歌
かくしつゝ とにもかくにも 長らへて 君が八千代に 逢ふよしもがな
0348
仁和の帝のみこにおはしましける時に御をばの八十の賀にしろがねを杖につくれりけるを見てかの御をばにかはりてよめる
僧正遍昭
千早ぶる 神のきりけむ つくからに 千年の坂も 越えぬべらなり
0349
堀河のおほいまうちぎみ(*藤原基経)の四十の賀九條の家にてしける時によめる
在原業平朝臣
櫻花 ちりかひ曇れ おいらくの 來むといふなる みちまがふがに
0350
さだときの皇子(*貞辰親王。清和天皇の皇子。)のをばの四十の賀を大井にてしける日よめる
紀これをか(*紀惟岳)
龜のをの やまのいはねを とめておつる 瀧の白玉 千世の數かも
0351
さだやすのみこ(*貞保親王。清和天皇の皇子。)の后の宮(*二条の后)の五十の賀奉りける御屏風に櫻の花のちる下に人の花見たるかた書けるをよめる
藤原興風
いたづらに 過ぐる月日は おもほえで 花見てくらす 春ぞすくなき
0352
もとやすのみこ(*本康親王。仁明天皇の皇子。)の七十の賀のうしろの屏風によみて書きける
紀貫之
春くれば 宿にまづ咲く 梅のはな 君がちとせの かざしとぞ見る
0353
素性法師
いにしへに ありきあらずは 知らねども 千年のためし 君にはじめむ
0354
ふして思ひ おきて數ふる 萬世は 神ぞしるらむ わが君のため
0355
藤原三善みよしが六十の賀によみける
在原滋春(*在原業平の子)
鶴かめも 千年ののちは 知らなくに あかぬ心に まかせ果ててむ
此の歌は或人在原のときはる(*在原時春。滋春の子。)がともいふ
0356
良岑のつねなり(*良岑経也)が四十の賀にむすめにかはりてよみ侍りける
素性法師
萬代を まつにぞ君を いはひつる 千年のかげに 住まむと思へば
0357
内侍のかみ(*藤原満子。藤原高藤女。)の右大將藤原朝臣(*藤原定国。満子の兄。)の四十の賀しける時に四季の繪かける後の屏風にかきたりける歌
春
かすが野に 若菜つみつゝ 萬代を いはふ心は 神ぞしるらむ
0358
躬恆
やまたかみ 雲居に見ゆる 櫻花 こゝろのゆきて 折らぬ日ぞなき
0359
夏
友則
めづらしき 聲ならなくに 郭公 こゝらの年を あかずもあるかな
0360
秋
躬恆
すみの江の 松をあきかぜ 吹くからに 聲うちそふる 沖つしらなみ
0361
忠岑
千鳥鳴く さほの川霧 たちぬらし 山の木の葉も 色まさりゆく
0362
是則
秋くれど 色もかはらぬ ときは山 よそのもみぢを 風ぞかしける
0363
冬
貫之
白雪の 降りしくときは みよしのの やました風に 花ぞちりける
0364
春宮(*保明親王。醍醐天皇の皇子。)の生まれたまへりける時にまゐりてよめる
典侍藤原よるかの朝臣(*藤原因香)
みねたかき 春日の山に いづる日は くもる時なく 照らすべらなり
卷第八 離別歌
0365
題しらず
在原行平朝臣
立ち別れ いなばの山の 嶺に生ふる まつとしきかば 今かへりこむ
0366
讀人しらず
すがるなく 秋のはぎはら 朝たちて 旅ゆく人を いつとか待たむ
0367
限りなき くもゐのよそに 別るとも 人を心に おくらさむやは
0368
小野のちふる(*小野千古)が陸奧の介にまかりける時に母のよめる
たらちねの 親のまもりと あひ添ふる 心ばかりは 關なとゞめそ
0369
さだときのみこ(*貞辰親王)の家にて藤原のきよふ(*藤原清生)が近江の介にまかりける時にむまのはなむけしける夜よめる
紀としさだ(*紀利貞)
今日別れ あすはあふみと 思へども 夜や更けぬらむ 袖の露けき
0370
こしへまかりける人によみて遣はしける
かへるやま(*鹿蒜山) ありとは聞けど 春霞 たちわかれなば 戀しかるべし
0371
人のむまのはなむけにてよめる
紀貫之
をしむから 戀しきものを 白雲の 立ちなむのちは なに心地せむ
0372
ともだちの人の國へまかりけるによめる
在原滋春
別れては 程をへだつと 思へばや かつ見ながらに かねて戀しき
0373
あづまの方へまかりける人によみて遣はしける
いかこのあつゆき(*伊香子淳行)
思へども 身をし分けねば 目に見えぬ 心を君に たぐへてぞやる
0374
逢坂にて人を別れける時に詠める
なにはのよろづを(*難波万雄)
あふさかの 關しまさしき ものならば あかず別るゝ 君をとゞめよ
0375
題しらず
讀人しらず
から衣 たつ日はきかじ 朝露の おきてし行けば けぬべきものを
この歌はある人つかさを賜はりてあたらしき妻につきて年經て住みける人を捨ててたゞ明日なむ立つとばかりいへりける時にともかくもいはでよみて遣はしける
0376
常陸へまかりけるときに藤原公利によみてつかはしける
寵
朝なけに 見べききみとし たのまねば おもひたちぬる 草枕なり
0377
紀のむねさだがあづまへまかりける時に人の家に宿りて曉出でたつとてまかり申しければ女のよみていだせりける
讀人しらず
えぞ知らぬ いまこゝろみよ 命あらば われやわするゝ 人やとはぬと
0378
あひ知りて侍りける人の東の方へまかりけるを送るとてよめる
深養父
くもゐにも 通ふ心の おくれねば わかると人に 見ゆばかりなり
0379
友のあづまへまかりける時によめる
良岑ひでをか(*良岑秀崇)
しらくもの こなたかなたに たち別れ 心をぬさと(*幣を裁断するように) くだく旅かな
0380
みちのくにへまかりける人によみて遣はしける
貫之
白雲の やへにかさなる をちにても 思はむ人に 心へだつな
0381
人を別れける時によめる
わかれてふ ことは色にも あらなくに 心にしみて わびしかるらむ
0382
あひしれりける人のこしの國にまかりて年へて京にまうできて又歸りける時によめる
凡河内躬恆
かへる山 何ぞはありて あるかひは 來てもとまらぬ 名にこそありけれ
0383
こしの國にまかりける人によみてつかはしける
外よそにのみ 戀ひや渡らむ 白山(*しらやま。「越の白山」は391番の歌を参照。)の ゆき見るべくも あらぬ我が身は
0384
音羽山のほとりにて人を別るとてよめる
貫之
おとはやま こだかくなきて 郭公 きみがわかれを 惜しむべらなり
0385
藤原後蔭がから物の使に長月のつごもり方にまかりけるに上のをのこども酒たうびけるついでによめる
藤原かねもち(*藤原兼茂)
もろともに 鳴きてとゞめよ 蛬きり\〃/す 秋のわかれは 惜しくやはあらぬ
0386
平もとのり(*平元規)
秋霧の ともに立ちいでて 別れなば 晴れぬおもひに 戀ひやわたらむ
0387
源のさね(*源実)がつくしへ湯あみむ(*「浴む」は上二段に活用)とてまかりける時に山崎にてわかれ惜しみける所にてよめる
しろめ(*白女)
いのちだに 心にかなふ ものならば 何かわかれの 悲しからまし
0388
山崎より神なびの森まで送りに人々まかりて歸りがてにしてわかれ惜しみけるによめる
源さね
人やりの 道ならなくに 大方は いきうしといひて いざ歸りなむ
0389
今は是れより歸りねとさねがいひけるをりによみける
藤原かねもち(*藤原兼茂)
慕はれて 來にし心の 身にしあれば 歸るさまには 道も知られず
0390
藤原のこれをか(*藤原惟岳)が武藏の介にまかりける時に送りに逢坂を越ゆとてよみける
貫之
かつ越えて 別れもゆくか 逢坂は 人だのめなる 名にこそありけれ
0391
大江の千古が越へ罷りける馬の餞によめる
藤原兼輔朝臣
君が行く こしの白山 しらねども 雪のまに\/ あとはたづねむ
0392
人の花山(*元慶寺。遍昭が住持をしていた。)に詣できて夕さりつ方歸りなむとしける時によめる
僧正遍昭
夕暮の まがきは山と 見えななむ 夜は越えじと やどりとるべく
0393
山に登りて歸りまうできて人々別れけるついでによめる
幽仙法師
わかれをば 山の櫻に まかせてむ とめむとめじは 花のまに\/
0394
雲林院のみこ(*常康親王)の舍利會に山に登りて歸りけるに櫻の花のもとにてよめる
僧正遍昭
山風に 櫻ふきまき みだれなむ 花のまぎれに 立ちとまるべく
0395
幽仙法師
ことならば(*同じことなら) 君留まるべく 匂はなむ 歸すは花の 憂きにやはあらぬ
0396
仁和の帝(*光孝天皇)みこにおはしましける時にふるの瀧御覽じにおはしまして歸り給ひけるに詠める
兼藝法師
あかずして 別るゝ涙 たきにそふ 水まさるとや しもは見ゆらむ
0397
かんなりのつぼ(*襲芳舎)にめしたりける日おほみきなどたうべて雨のいたう降りければ夕さりまで侍りて罷り出で侍りける折に杯をとりて
貫之
秋萩の はなをば雨に ぬらせども 君をばまして をしとこそ思へ
0398
とよめりけるかへし
兼覽王
をしむらむ 人の心を しらぬまに 秋のしぐれと 身ぞふりにける
0399
兼覽のおほきみに初めて物語して別れける時によめる
躬恆
別るれど 嬉しくもあるか 今宵より あひみぬ先に 何を戀ひまし
0400
題しらず
讀人しらず
あかずして わかるゝ袖の 白玉は 君がかたみと つゝみてぞゆく
0401
かぎりなく 思ふ涙に そぼちぬる 袖はかわかじ あはむ日までに
0402
かきくらし ことは(*同じことなら)降らなむ 春雨に ぬれぎぬきせて 君をとゞめむ
0403
しひて行く ひとをとゞめむ 櫻花 いづれを道と まどふまで散れ
0404
志賀の山越にて石井のもとにて物いひける人の別れける折によめる
貫之
むすぶ手の 雫ににごる 山の井の あかでも人に 別れぬるかな
0405
道にあへりける人の車に物いひつきて別れける所にてよめる
友則
下の帶の 道はかた\〃/ 別るとも 行き廻りても 逢はむとぞ思ふ
卷第九 羇旅歌(*原文「■(覊の馬を奇に:き::大漢和34794)旅歌」)
0406
もろこしにて月を見てよみける
安倍仲麿
あまの原 ふりさけ見れば かすがなる 三笠の山に いでし月かも
この歌は昔仲麿を唐土に物ならはしに遣はしたりけるにあまたの年を經てえ歸りまうで來ざりけるをこの國より又使まかりいたりけるにたぐひてまうできなむとて出でたりけるにめい州といふ所の海邊にてかの國の人むまのはなむけしけりよるになりて月のいと面白くいでたりけるを見てよめるとなむ語り傳ふる
0407
おきの國に流されける時に船にのりていでたつとて京なる人の許に遣はしける
小野篁朝臣
わたの原 八十島かけて こぎいでぬと 人には告げよ 蜑のつり舟
0408
題しらず
讀人しらず
都いでて 今日みかのはら いづみ川 かはかぜさむし 衣かせやま(*鹿背山)
0409
ほの\〃/と 明石の浦の 朝霧に 島がくれ行く ふねをしぞおもふ
此の歌はある人のいはく柿本人麿がなり
0410
あづまの方へ友とする人一人二人いざなひていきけり三河國八橋といふ所にいたれりけるにその川のほとりに杜若いと面白う咲けりけるを見て木の蔭におりゐて杜若といふ五文字を句のかしらにすゑて旅の心をよまむとてよめる
在原業平朝臣
唐衣 きつゝなれにし 妻しあれば はる\〃/きぬる 旅をしぞ思ふ
0411
武藏の國と下總の國との中にある角田川の邊に到りて都のいと戀しう覺えければしばし川のほとりにおりゐて思ひやれば限りなく遠くも來にけるかなと思ひわびてながめをるに渡守はや舟に乘れ日も暮れぬといひければ舟に乘りて渡らむとするに皆人物わびしくて京に思ふ人なくしもあらずさる折に白き鳥のはしと足と赤き川のほとりに遊びけり京には見えぬ鳥なりければ皆人見しらず渡守にこれは何鳥ぞと問ひければこれなむ都鳥といひけるを聞きてよめる
名にしおはば いざこととはむ 都鳥 我が思ふ人は ありやなしやと
0412
題しらず
讀人しらず
北へゆく 鴈ぞ鳴くなる つれてこし 數はたらでぞ 歸るべらなる
此の歌はある人男女もろともに人の國へまかりけり男まかりいたりて即ちみまかりにければ女ひとり京へ歸る道に鴈の鳴きけるを聞きてよめるとなむいふ
0413
あづまの方より京へまうでくとて道にてよめる
おと(*乙)
山かくす 春のかすみぞ 恨めしき いづれ都の さかひなるらむ
0414
越の國へまかりけるとき白山を見てよめる
躬恆
消えはつる 時しなければ 越路なる 白山の名は 雪にぞありける
0415
あづまへまかりける時道にてよめる
貫之
絲による ものならなくに 別れ路の 心ぼそくも 思ほゆるかな
0416
甲斐の國にまかりける時道にてよめる
躬恆
夜をさむみ 置くはつ霜を はらひつゝ 草の枕に あまたたびねぬ
0417
但馬の國の湯へまかりける時に二見の浦といふ所に泊りて夕さりのかれいひたうべけるに共にありける人々歌よみけるついでによめる
藤原かねすけ
夕月夜 おぼつかなきを 玉くしげ ふたみの浦は あけてこそみめ
0418
惟喬のみこのともに狩にまかりける時に天の川といふ所の川のほとりにおりゐて酒など飮みけるついでに皇子のいひけらく狩して天の川原にいたるといふ心をよみて杯はさせと云ひければよめる
在原業平朝臣
狩り暮し たなばたつめに 宿からむ 天の川原に われは來にけり
0419
みここの歌をかへす\〃/よみつゝかへしえせずなりにければともに侍りてよめる
紀有常
ひととせに ひとたび來ます 君まてば 宿かす人も あらじとぞおもふ
0420
朱雀院(*宇多上皇)の奈良におはしましける時に手向山にてよめる
菅原朝臣
このたびは ぬさもとりあへず 手向山 もみぢの錦 神のまに\/
0421
素性法師
手向には つゞりの袖も きる(*切る)べきに 紅葉にあける 神やかへさむ
卷第十 物名
※ テキスト傍点部分を太字で示した。
0422
うぐひす
藤原敏行朝臣
心から 花のしづくに そぼちつゝ うくひず(*憂く乾ず)とのみ 鳥の鳴くらむ
0423
ほとゝぎす
くべきほど ときすぎぬれや 待ちわびて 鳴くなる聲の 人をとよむる
0424
うつせみ
在原しげはる(*在原滋春)
波のうつ せみれば(*瀬見れば)玉ぞ みだれける 拾はば袖に はかなからむや
0425
かへし
壬生忠岑
袂より 離れて玉を つゝまめや これなむそれと うつせみむ(*移せ。見む)かし
0426
うめ
讀人しらず
あなうめに(*憂。目に) 常なるべくも 見えぬかな 戀しかるべき 香は匂ひつゝ
0427
かにはざくら(*樺桜)
貫之
かづけども 波のなかには さぐられで 風吹くごとに 浮き沈む玉
0428
すもゝの花
今いくか 春しなければ うぐひすも ゝのはながめて 思ふべらなり
0429
からもゝの花
深養父
あふからも ゝのはなほこそ 悲しけれ 別れむことを かねて思へば
0430
たちばな
小野しげかげ(*小野滋蔭)
足引の 山たちはなれ 行く雲の やどり定めぬ 世にこそありけれ
0431
をがたまの木(*黄心樹)
友則
み吉野の 吉野の瀧に 浮びいづる 泡をかたまの きゆと見ゆらむ
0432
山がきの木
讀人しらず
秋はきぬ 今やまがきの きり\〃/す 夜な\/なかむ 風の寒さに
0433
あふひ かつら
かくばかり あふひの稀に なる人を いかがつらしと 思はざるべき
0434
人めゆゑ 後にあふひの 遙けくは(*原文「遙けくば」) わがつらきにや 思ひなされむ
0435
くたに(*苦胆・木丹-リンドウともボタンともいう。)
僧正遍昭
散りぬれば 後はあくたに なる花を 思ひ知らずも まどふ蝶かな
0436
さうび
貫之
我はけさ うひにぞ見つる 花の色を あだなる物と いふべかりけり
0437
をみなへし
友則
しら露を 玉にぬくとや さゝがにの 花にも葉にも 絲をみなへし(*綜し)
0438
朝露を わけそぼちつゝ 花見むと いまぞ野山を みなへしりぬる(*皆経、知りぬる)
0439
朱雀院(*宇多法皇御所)の女郎花あはせの時にをみなへしといふ五文字を句のかしらに置きてよめる(*折句)
貫之
をぐら山 みねたちならし なく鹿の へにけむ秋を しる人ぞなき
0440
きちかうの花
友則
あきちかう のはなりにけり 白露の 置ける草葉も 色かはりゆく
0441
しをに
讀人しらず
ふりはへて(*ことさらに) いざ故郷の 花見むと こしをにほひぞ 移ろひにける
0442
りうたんの花
友則
我が宿の 花ふみしだく とりうたん のはなければや こゝにしもくる
0443
をばな
讀人しらず
ありと見て たのむぞ難き 空蝉の 世をばなしとや 思ひなしてむ
0444
けにごし(*牽牛子〔けにごし・けんごし〕=朝顔)
谷田部名實
うちつけに こし(*濃し)とや花の 色をみむ おく白露の そむるばかりを
0445
二條の后春宮の御息所と申しける時にめど(*蓍〔めど・めどき〕)にけづり花(*木を削って作った造花)させりけるをよませ給ひける
文屋康秀
花の木に あらざらめども 咲きにけり ふりにし果このみ なるときもがな
0446
しのぶぐさ
紀としさだ(*紀利貞)
山高み つねにあらしの ふくさとは 匂ひもあへず 花ぞ散りける
0447
やまし(*花菅)
平あつゆき(*平篤行)
郭公 みねの雪にや まじりにし 有りとは聞けど 見るよしもなき
0448
からはぎ(*唐萩・萩)
讀人しらず
空蝉の からはきごとに とゞむれど 魂のゆくへを 見ぬぞかなしき
0449
かはなぐさ(*川菜草=カワモズク)
深養父
うば玉の 夢になにかは なぐさまむ うつゝにだにも あかぬ心を
0450
さがりごけ(*サルオガセ)
たかむこのとしはる(*高向利春)
花の色は 唯ひとさかり こけれども(*濃けれども) かへす\〃/ぞ 露はそめける
0451
にがたけ(*マダケ、メダケ)
滋春(*在原滋春)
命とて 露をたのむに かたければ ものわびしらに なく野邊の蟲
0452
かはたけ(*これもマダケ、メダケ)
景式王(*かげのりのおほきみ:惟条親王の子)
さよふけて なかばたけゆく ひさかたの 月吹きかへせ 秋の山風
0453
わらび
素性法師(*ママ。他のテキストでは真静法師とする。)
煙たち 燃ゆとも見えぬ 草の葉を 誰かわらび(*藁火の意を含む。)と 名づけそめけむ
0454
さゝ まつ びは ばせをば
紀のめのと
いさゝめに 時まつまにぞ ひはへぬる 心ばせをば 人に見えつゝ
0455
なし なつめ くるみ
兵衞(*藤原高経女。藤原忠房室。)
あぢきなし 歎きなつめそ 憂き事に あひくるみをば 捨てぬものから
0456
からこと(*唐琴)といふ所にて春の立ちける日よめる
安倍清行朝臣
波のおとの けさからことに きこゆるは 春のしらべや 改まるらむ
0457
いかが崎(*河内国伊香・伊加賀)
兼覽王
かぢにあたる 棹の雫を 春なれば いかがさき散る 花と見ざらむ
0458
からさき
阿保のつねみ(*阿保経覧)
かの方に いつからさきに 渡りけむ 波路はあとも のこらざりけり
0459
伊勢
波の花 おきからさきて 散りくめり 水の春とは かぜやなるらむ
0460
紙屋川
貫之
うばたまの 我がくろかみや かはるらむ 鏡のかげに ふれるしら雪
0461
よど川
あしびきの 山邊にをれば 白雲の いかにせよとか はるゝ時なき
0462
かた野
忠岑
なつぐさの うへはしげれる 沼水の ゆくかたのなき わが心かな
0463
桂の宮
源ほどこす(*源忠)
秋くれど 月のかつらの みやはなる(*実やは生る) 光をはなと ちらすばかりを
0464
百和香(*はくわかう:合せ香か。)
讀人しらず
花ごとに あかず散らしし 風なれば 幾そばくわが うしとかは思ふ
0465
すみながし
滋春
春がすみ なかし通ひ路 なかりせば 秋くる鴈は かへらざらまし
0466
おき火
都良香
流れいづる かただに見えぬ 涙川 おきひむ(*沖干む)時や そこは知られむ
0467
ちまき
大江千里
のちまきの 後れて生ふる 苗なれど あだにはならぬ 頼みとぞ聞く
0468
はをはじめるをはてにてながめをかけて時の歌よめと人のいひければよめる
僧正聖寶
はなのなか めにあくや(*目に飽くや)とて 分けゆけば 心ぞ共に 散りぬべらなる
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第一卷春歌(上)
歌题: 旧年中立春之日所咏之歌
歌意: 虽未至正月,春之气息却已来临。而冬天结束了,应该说现在是去年呢?但正 月尚早,或应说是今年呢?在原元方
作者: 在原元方,在原栋梁之子,在原业平之孙,官至正五位下。
歌题: 立春之日所咏之歌
歌意: 不知夏日之时袖底浸湿,用手掌捧起的清水,虽在寒冷之冬时成冰,但在立春的今日,和煦的暖风将解此冰霜吧!纪贯之
作者: 纪贯之,古今集撰者,官至从四位下,天庆九年身亡,着有土佐日记,新撰和歌集,贯之集,古今集假名序。
歌题: 无题
歌意: 虽已至春天,但春之彩霞相立之所竟在何方?在这吉野之里的吉野山里,仍然飘着白雪,想必春天仍未至吧!
作者: 无名
歌题: 二条后叹咏初春之御歌
歌意: 虽白雪仍纷飞,但春却已来临,在那冬天冰冻的莺之泪,如今也将溶解吧!藤原高子
作者: 藤原高子,赠太政大臣长良之二女,清和天皇之女御,阳成天皇之母。
歌题: 无题
歌意: 黄莺伫立在满开的梅花之枝叶上,鸣叫着等待春天的到临,但此时却无春日之景,白雪仍纷飞空中。
作者: 无名
歌题: 咏叹白雪覆梅之景而咏之歌
歌意: 春已来临,莺鸟是否误认那白学为梅之花否?那那覆满白雪的枝干上鸣叫着。素性法师
作者: 素性法师,僧正遍照在俗之子,官至左进将监。
歌题: 无题
歌意: 大概是我用心深远而摘此树枝,本应融化之雪仍覆留枝上,甚至误认为花朵。
作者: 无名
歌题: 在二条之后仍称作东宫之御息所时,在正月三日皇后呼我至前吩咐事情时,因日光照射,雪落额前。见此光景而咏之歌。
歌意: 春日之阳光(东宫)施予着恩惠于我,如此雪降我身,连头法都变白了,因此而感到诧异文屋康秀
作者: 文屋康秀,传为天武天皇皇子二品长亲王之后代
歌题: 见积雪而咏之歌
歌意: 朝霞相立,木之芽也渐露枝头,在这尚未花开之乡间,春之淡雪如花般飘落着。纪贯之
作者: 纪贯之
歌题: 在初春时咏出之歌
歌意: 人们虽说春已来临,但告知春天来临的黄莺仍未啼叫,我想大概春天尚未来到吧。壬生忠芩
作者: 壬生忠芩,古今集撰者之一,官至六位
歌题: 初春时所咏之歌
歌意: 虽说春天已经到来,但那梅花仍未绽放,是否春来的太早?而花开的太迟?虽想加以判断,但连告知春天的莺鸟都不曾鸣叫啊!
作者: 藤原言直
歌题: 在宇多天皇的御代,后宫歌合所咏之歌
歌意: 山谷间的山风,将冰融解,而融冰化成的水波,乃是春天最初的花吧。
作者: 源当纯
歌题: 在没有说明的时候,和之前相同
歌意: 将那满开的梅花之香气,添与风之使者,为了引出那春天的莺鸟。
作者: 纪有则
歌题: 无题
歌意: 若没有谷间莺鸟鸣叫之声,那谁有知晓春天的来临呢?想必谁都不知道吧!
作者: 大江千里
歌题: 无题
歌意: 虽然春天已到来,但在此山里花仍未绽放,如鸣叫中野鸭羽毛般的,就是莺鸟鸣叫之声啊!
作者: 在原栋梁
歌题: 无题
歌意: 因住在野边,那莺鸟鸣叫之声,每日早朝必将听闻。
作者: 无名
歌题: 无题
歌意: 在这春日野之里,愿今日不起祝融之灾,乃妻与我共于此。
作者: 无名
歌题: 无题
歌意: 那春日野之飞火野的守卫啊!出来看看吧!已经不知何日,仍然摘着春天的嫩草。
作者: 贞元亲王
歌题: 无题
歌意: 在这深山里,积在松树上的雪仍未融化,在那京城里,野边的嫩芽已经长成青草了啊!
作者: 七条中宫
歌题: 无题
歌意: 等待已久的春雨在今日落下,若明日仍如此,那就去摘青草吧!
作者: 昭宣公
歌题: 在光孝天皇仍称作亲王时,有人相赠以青草时所附之歌
歌意: 想将之赠与你,于是来到着春之野原摘着青草时,白雪纷飞,积满了袖子。
作者: 无名
歌题: 当天皇说「献上你们的和歌吧」时所奉上之歌
歌意: 去摘那春日野的青草吧?就像那身穿白袖之衣的人一般
作者: 纪贯之
歌题: 无题
歌意: 称作春天之彩霞的衣服,因织的很薄,当山风吹起时,感觉就像要破掉一般。
作者: 在原行平朝臣
歌题: 宇多天皇的御代,后宫歌合时所咏之歌
歌意: 在正月所不知晓的松之翠绿也因春以来临之故,变成了一大片树荫。
作者: 源宗于
歌题: 当天皇说「奉上和歌」时所咏而奉上之歌
歌意: 春雨过后,在那野边的草木,春之气息彷佛更加的浓厚。
作者: 纪贯之